タクシーのメーターを見ないように、本を開く。
富山駅からタクシーに乗り、目的地に向かっている。約2時間の勉強会に参加するためである。
思えばこれまで、タクシーなんて贅沢なものとはあまり縁が無い人生を送ってきた。利用するのは、飲み会で終電を逃したときくらいだ。それがいま、勉強会の開始時間に間に合うようにと迷うことなくタクシーを選択している。
初めての場所。どのくらいの距離があるのか体感ではわからない。事前にGoogleマップで調べたら、富山駅から車で15分くらいと出ていた。歩いたら1時間。それなりに距離があることはわかっていた。
メーターを見始めると、きっとメーターから目が離せなくなるだろう。こういうときは本を読むのがいい。ふと目を上げて見るとそこには2000円の文字が表示されている。
「けっこういったなー、これ以上は勘弁してくれ」
そう思いつつ、再び本に目を落とす。結果的に2700円ほどで目的地に到着した。
費用対効果を超えたもの
松本から富山駅まで、片道の電車賃で9090円。そこにタクシー代と宿泊費が加わる。1000円の勉強会に、それだけの交通宿泊費を払ったことになる。
これをもし会社での出張として申請した場合、きっと許可は下りないだろう。費用対効果。コストパフォーマンス。その出張でいくらの利益が見込めるのか? 当然そのことは考えなくてはいけない。
ぼくは自分のことであっても費用対効果みたいに考えることがある。
これをやってどのくらい勉強になるだろうか。
どのくらいの効果があるのだろうか。
往復の交通費、宿泊費、参加費。果たしてこれらを支払う意味はあるのだろうか。元は取れるのだろうか。
いいのか悪いのかわからないけれど、最近はこういう費用対効果みたいな考え方から脱却し始めているような気がする。
効果があるかはわからない。もしかしたら空振りに終わるかもしれない。むしろ空振りになる可能性のほうが高い。冷静に考えてみたら元は取れないだろう。
それでも行きたいから行く。あの人に会いたいから会いに行く。そんな行動が自然にできるようになってきた。費用対効果を超えたもの。コストパフォーマンスを超えた「なにか」のために動けるようになってきている、そんな実感がある。
スイング数という価値
もったいない。
という考え方がある。これだけお金を使ってなにもなかったらもったいない。これだけの時間を使って求める変化が得られなかったらもったいない。
失敗したような、気が重たくなるような、傷つくような予感がする。
でもそれは予感なだけで、実際は起こらないことのほうが多い。
むしろ大切なのはスイングしたこと、今の自分のフルスイングをしたこと自体に、価値があるのだ。ヒットを打つかどうかではない。動き出すことが大切なのである。
スイングするとは、自分に対する投資である。それは自分の成長を信じている、とも言えるかもしれない。
スイングした数は、自分を信じられた数である。それこそが何よりの得られた価値だと思う。
帰りはゆっくり
勉強会のあと、富山駅まで戻るのにはちゃんと公共交通機関(電車)を使いました。会場から最寄り駅まで約25分歩いたあと、1時間に1本の電車に乗ってホテルまで帰りました。電車賃は220円。めっちゃ安い。
帰りにホテルまでタクシーを使うほど、ぼくはまだ自分に投資できないのかもしれません。それでも初めての土地で空気を感じながら歩く時間と、乗る在来線はわりと好です。
ちなみに勉強会、参加してよかったです。

出発したタクシーから撮影した富山駅。初めての場所はワクワクしますね。