小学5年生の息子の夏休みを、一緒に過ごした。
8月中旬から2週間ほど、静岡の山の中で、息子とほぼ二人きりの生活をした。二人だけの生活は大変ではあったけど、とても濃い日々だった。間違いなく、自分の人生のなかで、後悔のない時間だったと言える。この生活の中での気づきをいくつか書いていこうと思う。
一日のタイムスケジュール
この期間、1日の生活のタイムスケジュールはほぼ同じだった。一日の生活は以下の通り。
午前
朝8時ころ起きたあと、ぼくは瞑想やアファメーションなど、朝のルーティーンをこなす。その後、起きてきた息子と朝ごはんを食べる。息子はトーストで、ぼくは納豆と目玉焼きとバナナ。朝食のメニューは固定だ。
朝食が終わり次第、息子は夏休みの宿題に、ぼくは仕事に取り掛かる。ここが唯一といっていい、一日でもっとも集中できる時間である。ここでどれだけ仕事を進められるかが勝負になる。
30分のタイマーをセットして、息子は宿題に、ぼくは仕事に取り掛かる。タイマーが鳴ったら10分の休憩。これを繰り返す。この時間配分は、息子が決めたものだ。
12時になったら昼食の準備。昨晩の夕食の残り物を温めるだけのこともあれば、お蕎麦やパスタを茹でる日もある。昼食は簡単につくれるものをつくって食べる。
午後
昼食後は筋トレ。息子も気が向いたら一緒にやってくれる。10分程度の短い時間だけど、それなりにハードなトレーニングだ。息子と一緒だと「うおー!」とか「がんばれ!」と声を出せるのでいつも以上にがんばれている気がする。トレーニングは誰かと一緒にやるのが効果的だ。
13時半頃に、(ぼくの仕事の用事がなければ)プールに行く。「今年は25m泳ぐ」という目標を立てた息子と、プールに入る。遊びと練習の割合は、7対3くらいだ。
プールから帰ったらシャワーを浴びて夕食の準備に取り掛かる。自分ひとりなら適当でいいけれど、息子にコンビニ弁当を食べさせるわけにはいかない。と言ってもつくれるレパートリーは限られている。メニューは、ハンバーグ、カレー、餃子の3種類。基本的にはこのループである。一度だけ鍋をつくったけど、息子には不評だった。
息子によれば、夏休みの宿題にカレーづくりがあるという。9月の移動教室でカレーをつくるためらしい。ということもありカレーは息子と一緒に作った。息子の危険極まりない包丁さばきに、自分の指が切られるような恐怖を感じつつも、なるべく見ないようにして、野菜を切るのを任せた。
夜
夕食が済んだら片付けをして、ここからはお楽しみタイムである。息子とテレビゲーム(マリオカート)や、モノポリーをする。モノポリーでは、息子がリスクをとって(借金してまで)積極的に投資をする姿を見る。慎重派だと思っていたけどゲームを見極めて大胆な行動を取るという意外な一面を知る。マリオカートでも、モノポリーでも、息子は大声をあげている。楽しそうでなにより。
その後はお風呂に入る。お風呂では本当はゆっくりしたいけど、息子がプールでもらった水鉄砲で遊びを仕掛けてくるので、こちらも応戦する。
お風呂をでたあとは就寝の準備をする。この時期、エアコンのない場所で快適に寝るためには、保冷剤が必須だ。冷凍庫から保冷剤を10個弱もっていき、布団に横になりつつ足の裏などを冷やす。息子はぼくの腹や太ももまで冷やそうとしてくる。毎晩やめろというけど、毎晩やってくる。
布団の中では本の読み聞かせをする。息子の好きなゲーム、マインクラフトの小説である。海外のものを翻訳したもので、日本語が少し読みにくい。静岡で滞在するときには毎回このシリーズを読む。これで確か4冊目だ。本を読んで、区切りのいいところになったら寝る。
このような生活を2週間ほど過ごした。
気づき
この生活の中での気づきをいくつか記しておきたい。これは誰のためということでもなく、たぶん自分のために。
遊びが不安を超える
息子は今年、プールで25m泳ぐという目標を立てている。夏が始まるころ「今年はプールを頑張りたい」と言い、それじゃあ目標を立てようと一緒に話をして、できたらうれしい目標として「25m泳ぐ」という目標を立てた。
目標を立てた頃の息子は、プールで水に顔をつけられないくらいだった。夏がはじまった頃から休日には温水プールに通い、遊びつつ、練習しつつ、少しずつできることを増やしていった。静岡に来る頃には蹴伸びまでできるようになっていた。
静岡での最初の頃は、息子は水に潜るときに鼻をつまみがちだった。水が鼻に入ることを怖れているのだろう。水に対してまだ少し不安があるのだと思った。
鼻をつままず潜れるようにと、息子と水中での戦いごっこをするようにした。水中でのパンチは10点。蹴伸びしてのパンチは50点。息子は攻撃していいけど、ぼくは攻撃してはいけないという不平等条約ルールだ。
両手で連続パンチをしてくるので、鼻をつままなくなる。蹴伸びもパンチを当てるために強く壁を蹴るようになる。そんなぼくの目論見通りに、息子は戦いに夢中になり、鼻をつまむことをしなくなったし、壁も強く蹴るようになった。おかけでぼくの体は痣だらけになったのだけど。
なにかを上達しようとするとき、大事なのは「試行回数」と「改善」だと言われる。もっと簡単に言うと「がんばる回数」と「工夫の時間」だ。息子にこれを伝えたこともあったけど、どうもしっくりきていないみたいだった。それは上達云々の前に、不安や恐怖があるからだろう。
そんな不安や恐怖を乗り越えるために必要なのは、きっと「がんばる回数」でも「工夫の時間」でもなく、「遊び」なのだ。怖いけどがんばってやるのではなく、楽しそうだからやってみる。その遊びのなかでいつの間にか不安や恐怖を乗り越えている。この状態がいいのだろう。
がんばる前に、遊びが必要。この順番が大事なのだ。
息子は、静岡で一緒に過ごすあいだに少しずつ泳げる距離を伸ばしていき、ついに25m泳げるようになった。
教えるのではなく問う
勉強でも水泳でも、教えようとするとよくない。相手のことを思っていようが一方的に教えようとすると、相手は拒絶する。一時期ゴルフの打ちっぱなしで問題になっていた、教えるおじさんが迷惑なのと同じである。このことを忘れて、つい教えたくなってしまう。
息子の宿題の丸付けをしていたときだ。見ていると、どうやら息子は国語の文章問題が少し苦手なように見えた。
「問題の答えが文章のなかにあるのだから、答えのところに線を引いたほうがいい。線を引いたところをただ写せばいいんだよ」
ついつい、言ってしまった。
息子は頑なに線を引くことを拒否した。ぼくとしても線を引くだけなんだからやれば良いと譲らなかった。線を引くなんて簡単なことだからすぐにやってみればいいじゃないかという親父と、教えてくれなんて頼んでない息子で、喧嘩になった。
いいやり方があるから教えたいのに、聞き入れてもらえない。この状況をどうしたものかと考え直し、ぼくは息子に問いかけることにした。
「お父さんは国語の文章問題が苦手だったんだけど、たったひとつのことをやることで国語の点数がすごくあがったんだよね。その方法知りたい?」
真似したのはYouTube広告の冒頭に出てくるような問いかけである。
これに息子は「知りたい」と答えた。そしてぼくが、「答えは文章の中にあるから、答えだと思ったところに線を引いただけで、お父さんは点数があがったんだよ」と言うと、息子は「さっき聞いたことと同じじゃないか」という顔をしつつ、文章に線を引き始めた。
教える内容はまったく変わらないし、言っていることもさっきと同じなのに、聞き入れてくれるのである。
目の前の人の行動を見たとき、「もっとこうしたほうがいいのに」と思うことがあるけれど、一方的にやり方を教えるのはいい方法ではない。教えるのではなく、YouTubeの広告のように、アフターを伝えつつ問いかけるのである。
大変さこそ幸せ
静岡での日々はひとことで言えば大変だった。口内炎も2つできた。いつもならビタミン剤を大量に飲めば治るのだが、このときにはビタミン剤をいくら飲んでもなかなか治らなかった。そのくらい大変だった。
だから、いつもの生活に戻りたいと思う瞬間もあった。
「やらなければ」と思っていることができていない焦りと、このままでは稼げるようにならないのではという不安が、頭のどこかにあった。
仕事をする時間、SNSに発信する時間や本を読む時間、ただゆっくりする時間がほしいとも思った。
しかし、夏休みが終わり、息子と離れたいま、感じるのは喪失感だ。
大変だったけど、息子の成長に関われた。
自分の時間はなかったけど、息子とたくさん話ができた。
怒ることもあったけど、大笑いすることもあった。
渦中にいるとどうしても目の前の大変さに追われ、解放されたい気持ちが出てきてしまう。けれど、幸せとは大変さのなかにあるのだ。むしろ大変さそのものが幸せと言ってもいい。目の前の忙しさに追われていると気づけないけど、大変さこそ幸せなのかもしれない。
では、どうやったら大変さの幸せに気づけるのだろう。どうしたら今の幸せを感じられるのだろう。
はっきりとしたことは言えないけれど、ぼんやりと思うのは、前提に立つことだろう。今が幸せであるという前提だ。あれがあったら幸せとか、幸せになるためにこれをする、のではなく、今が幸せであるという前提に立ち、周りを見ることだろう。
今の幸せに気づける生き方をすることこそが、幸せな生き方だ。
息子の変化
水を克服した息子は、シャンプーもひとりでできるようになり、調子に乗って人生初のトリートメントを体験するまでになりました。トリートメントはえらく気に入り、昼間にシャワーを浴びたときもトリートメントをしています。水泳ができるようになった息子は、サラサラつや髪のトリートメント野郎にもなりましたとさ。
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