井の中の蛙大海を知らず。
ということわざがある。小集団の中では高い知識や能力でも、集団の外、つまり世の中に出ればたいしたことはない。だらか小集団の中で調子に乗らないほうがいい。そういった意味で使われることが多い言葉である。
しかし、実際は逆のことの方が多いのではないか。井の中にいるから、自分の能力を過小評価してしまうこと。世の中で見れば高い能力でも、自分が所属する小集団の中では平均的な能力であり、中途半端な能力だと思い込むこと。こういった状況の方が多いのではないか。井の中の蛙、大海を知って、もっと自信を持っていい。今週はそんな気づきである。
出来事
今週、社外の方の仕事を手伝う機会があった。Excelで表を作るのだけど、計算が少しだけ複雑なところがある。確かにパソコンが苦手な人がやるには苦労しそうな作業だ。
僕は普段から仕事でExcelを使い慣れている。話を聞いて割と簡単にできそうな感触をもち、すぐに作業に取り掛かった。計算が複雑なところはインターネットでExcel関数を調べつつ、計算式を組み立てる。計算式が出来上がれば、その式をコピーして表を作る。最後は表を装飾し、見た目を整える。作業時間にして15分程度である。その表を提出すると「何か魔法でも使ったのか」というほど驚き、喜んでもらえた。
強みとは、ほんの少しの得意
会社にいると、自分の本来の価値はわかりにくくなる。専門的な集団に所属するほど、自分の得意は埋もれるように感じる。しかし、その中でもほんの少しだけ、得意と感じられるところがある。
例えば、僕はものごとを細部まで理解したいという性格で、内側でどのような計算が行われているのかわからない市販のシミュレーションソフトを使うのが好きではない。だから専門の光学設計では、Excelで光学シミュレーションや、光学設計するための計算シートを自分でつくる。式を組み立てて、わかりやすく表現することは、社内でもほんの少しだけ得意だと思っている能力だ。そしてこれは、きっと会社の外では“できる”部類に入る能力なのだろう。
“逆”井の中の蛙
こういう「“逆”井の中の蛙」となっていることは誰にでもあるのだと思う。社内で少しだけ情報をまとめるのが上手。少しだけ資料を用いた説明が上手。少しだけ相手の意図をくみ取るコミュニケーションが上手。少しだけチーム運営が上手。こうした小集団の中で「ほんの少しだけ上手かも」と思える能力こそ、強みであり、才能であり、誰かの役に立てる能力なのだ。
4年くらい前、静岡の漁港で釣りをしていたときのこと。全く釣れず、「このまま手ぶらで帰ることになるな」と思っていたら、見かねた漁師さんが30cmほどのソーダガツオを2本くれたことがある。「ほれ、これ持っていけ」とライトな感じで。
こちらとしては、釣ったこともない大きな魚だったので、「こんなに大きいの良いんですか?」という感じだったのだが、その漁師さんにとっては、取るに足らないことだったのだろう。
自分にとって取るに足らない、何気ないことでも、他の人にとっては助けになることがある。自分の得意が他の人の苦手を補えることは、身近なところにも転がっている。だから、まずは少しだけ、自分のできることを井戸の外で表現してみるといい。