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【今週の気づき/059】退職願

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「そこに山があるから」

ある登山家が「なぜ山に登るのか」と聞かれたときに答えた言葉らしい。子供の頃、父親からこの話を聞いたとき、「そんなバカな」なんて思っていた。山登りなんて大変なだけだ。
なぜわざわざ大変な思いをして山に登るのか。平地にいればのんびりできるのに、なぜ重い荷物を背負って登らなくてもいい山を登るのか。全く理解できなかった。「そこに山があるから」という、わけのわからない理由で登るなんて、信じられなかった。

でも、最近は少しわかるようになった。登山、ということではなく、人間とはそういうものなのだ。やらなくてもいい大変なことをしたがる。よせばいいのに、危険なことをやりたがる。のんびりすること、楽することよりも、興味や関心が勝ってしまう。そういうものなのだ。

退職願

今週「退職願」を提出した。ずっと考えていたことだ。最後の仕事として、会社に個人事業主化制度を導入するべく進めてきたけど、結果的にはかなり難しそうだ。僕が実験的にテスト導入する件も、同じくかなり厳しい。これはもうしょうがない。会社の判断だ。

お金よりも時間の方が大切という、最近の社会的な価値観の変化。フリーランス人口の増加。これらを考慮すれば、今後、働き方を考えたとき、会社は雇用という形態だけでなく、フリーランスとの付き合い方を考える必要が出てくるはずだ。この変化に備えるためにも、僕が実験的に個人事業主になるのは、会社にとっても悪くない条件だと思う。でも、会社としては「今じゃない」という判断だろう。

不安

退職願いを提出したとき、自分でも驚いたのは、退職願を出す前と出した後での不安感の変化だ。出す前は、「まあ、なんとかなるだろう」と思っていたけど、出した後の不安感はものすごく大きい。「本当に大丈夫なのか?」「やっていけるのか?」答えのない問いを頭の中で繰り返している。

上り坂を登る

退職願を出した夜、不安からか、ひとりでじっとしていられず、自転車(ママチャリ)で走り出した。家を出て北に向かい、松本城から北に向かって延びる約2kmの上り坂を登っていく。地面に足をつかないよう、立ち漕ぎで懸命に足を動かす。ひたすら漕いでいるうちに、目の前の上り坂は、これからの自分の人生のように思えてきた。

「あぁ、自分は山のある人生を選んだんだな」

そんな事を考えていた。一度きりの人生。やりたいことはやったほうがいい。もしかしたら、大変な道を選んだことを後悔するかもしれない。会社を辞めたことを悔いるかもしれない。でも、死ぬときにやらなかったことを後悔するよりはマシだ。僕は、死ぬときの後悔よりも、生きているときの後悔を選んだのだ。

「道を知っているのと、実際に歩くのは違う」

映画マトリックスで出てきたセリフ。今後はこのセリフを良くも悪くも実感し続けることになるだろう。

自転車で坂を登りきり、ひと気のない田んぼに出た。自転車を止め、背中の汗を感じながら、夜空を見上げる。明かりのない場所では、こんなにも星がたくさん見えるのだ。景色を美しいと思えるのは、その場所に行くための過程を味わったからだろう。

上り坂があるから、人生は彩られる。人は山を登らずにはいられないものなのだ。