「無駄なものを作るといいですよ」
これは、安田佳生さんに個人で事業をするための相談に伺ったとき、安田佳生さんからかけていただいた言葉です。サラリーマン思考を個人事業思考に切り替りかえるためのスイッチとなるものでした。
安田さんは現在、BFIという会社を立ち上げ、中小企業の経営者の相談に乗り、新しい事業をつくる仕事をされています。これまでに何十社もの企業をクライアントに持ち、その会社独自のブルーオーシャンとなる商品づくりをされています。
僕は安田さんが主宰するオンラインサロン「GIVEの実験室」に2019年の5月から入っており、今回のお会いする機会をいただくことができました。
安田さんの言う、無駄なものとはどういうものか、なぜ無駄なものを作ると良いのか。
これらについて書いてみようと思います。
安田佳生さんはどんな人?
安田佳生さんをご存じない方に簡単に説明すると、安田さんは野球の野村監督のような人です。僕の考えるお二人の共通点は下記の2つです。
・常識にとらわれないこと
・本質思考であること
例えば、野村監督はピッチャーのクイックモーションや、ピッチャーの分業制(先発、中継ぎ、抑え)を日本で初めて導入し、常識にとらわれずに新しい戦略や戦術を使うことで有名です。
安田さんも、1990年にワイキューブという人材採用コンサルティング会社を創設され、当時の常識だった「中小企業は新卒採用を行わない」という業界の考えを変え、日本の中小企業に新卒採用を根付かせた人です。
また本質思考のお二人は名言が多いです。野村監督と安田佳生さんの名言のリンクを貼っておくので良ければ覗いてみてください。
無駄なことをやった方が良い
さて、冒頭の「無駄なものを作ると良いですよ」という言葉。安田さんがおっしゃるには、人間は無駄なものが大好きで、実は無駄な物事に多くの時間やお金を使っているとのことなんです。
でも急に無駄なものを作ると聞いてもピンときませんよね。
僕を含めて多くの人は無駄を無くすことを考えて行動していると思います。会社ではコストを抑えて製品を作ること、効率を上げて作業することが良しとされ、無駄をなくすことが求められます。
”無駄=無くしたほうが良いもの”
この価値観で多くの人が仕事をしているのではないでしょうか。でも安田さんはむしろ無駄なことをやった方が良いと言うのです。
この話のきっかけになったものは1つのコップでした。会議室で飲み物を出していただき、ふと見ると、茶色い紙コップに、おしゃれな木製の取っ手がついていました。「これ良いですね」と思わず言ったら、安田さんが答えてくれました。
「良いでしょこの取っ手。でもこれ、無駄なんですよ」
「え?」と上手くその意味をくみ取れずにいたら安田さんが説明してくれました。飲み物を飲むのであればコップの部分があれば十分で、取っ手は無くてもいいわけです。つまり紙コップが必要な部分、取っ手は無駄な部分ということ。一方で値段に目を向けると、必要な部分である紙コップは1円もしないくらいの価格、無駄な部分の木の取っ手は1800円もする。しかもこの木の取っ手、注文に対して供給が追い付かず、購入するにはなんと1.5か月~2か月待ちなんだそうです。
必要なものほど値段が下がる。それは参入する企業が多いから。無駄なものは値段が下がらない。参入する企業が無いから。つまり無駄なものほどブルーオーシャンなんですね。
「個人で何かやるなら必要なものではなく、無駄なものを作ると良いです。この取手のようなものを作ると良いですよ。」
人間は無駄が好き
安田さんはその他にも人間が好きな無駄なものの例を挙げながら、人間が無駄なものに囲まれていること、それを人間自ら求めていることを説明してくれました。
例えば腕時計。時間はスマホでもわかる。でも人は腕時計に数万から数十万、それ以上のお金を払います。
例えば野球。一定の距離から投げられた玉を木の棒で打つ。玉が90度の範囲に飛んだら、右斜め45度に向かって走る。よく考えてみたら不思議な光景です。
「動物から見たら、人間とはなんて無駄なことをやっている生き物なんだろうと思っていると思うんです。そんな暇があったら餌を取りに行けよと」
と安田さん。この動物から人間を見たらという視点が安田さんっぽいです。
価値のある無駄と価値のない無駄の境目は?
一方で人間が好きではない無駄もありそうです。真夏のサラリーマンのスーツはその代表例ですよね。汗だくで訪問されても困ってしまいます。
安田さんは
「価値のある無駄と価値のない無駄の境目を研究してください。」
と話してくれました。
きっと安田さんはその答えを持っているのだけど、僕に考える余地を与えてくれたのだと思います。
また無駄を研究するアドバイスとして、今まで無駄だと思っていたことをやると良いと教えてくれました。
今までだったら絶対に行かないところに行く。例えば、全く興味のない美術館。
今までだったら絶対にやらないことをやる。例えば、近所の空き地に穴を掘り続ける。
今までだったら絶対に作らないものを作る。例えば、誰かの自己紹介文を勝手に作る。
価値のある無駄と価値のない無駄の境目を研究し、自分独自の無駄を作る。そしてそれを売る方法を考えていく。ちょっとワクワクしてきました。
「無駄なものをつくると良い」という意味、おわかりいただけたでしょうか?
ちなみに安田さんはとても穏やかでやさしい人でした。
安田さんはポッドキャストもやられているので、興味を持った方は聞いてみてください。
とても勉強になりますよ。