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【光学】なんで絞りを絞っても写真の端が暗くならないの?

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このコラムについて

光学技術者が、カメラや光学技術に関する疑問にお答えします。原理を知るから、「もっとこうしたらいいんじゃない」とアイデアが出てくる。アイデアが出るからおもしろくなる。原理の理解がおもしろさにつながっていると感じてもらえたらうれしいです。

この記事を読むと得られるもの
  • ・周辺光量比の発生原理がわかる
    ・なぜ絞りを絞ると周辺光量比が改善されるかわかる

なんで絞りを絞っても写真の端が暗くならないの?

まぶたを半分閉じたとき(薄目にしたとき)、視界の外側から暗くなっていきますよね。同じようにカメラの絞りを絞ると、写真の周りから暗くなると思うかもしれません。

しかし、実際にはカメラの絞りを絞っても写真の端は暗くなりません。それどころか、絞りを絞ると写真全体の明るさは均一に近づきます。

写真の中心に対する端の明るさの度合いを「周辺光量比」といいます。写真中心の明るさに対して、写真端の明るさの比を取ったものです。周辺光量比が高ければ端はあまり暗くならず、周辺光量比が低ければ端は暗くなるということです。

そもそもなぜ写真の端っこが暗くなるのか。なぜ絞りを絞ると端が暗くなるのが改善するのか。

今回は「周辺光量比」ついて説明します。

絞りの位置と像の関係

では最初の質問「なぜ絞りを絞っても写真の端が暗くならないのか」にお答えします。

答えは、絞りがレンズの中にあるからです。

図のようにレンズと絞りの位置関係により、絞りを絞ったときの像のできかたは変わります。

レンズよりも前にあった場合。絞りを絞ると視野は周辺からぼんやり欠けていきます。これはまぶたと同じですね。

続いて絞りとレンズが同じ位置にある場合。こちらは絞りを絞っても視野が欠けることはなく、全体的に像の明るさが暗くなります。これは眼の瞳孔と同じです。瞳孔が閉じたときに視野が欠けたら大変ですよね。

最後は、レンズの後ろの絞りがある場合。この場合は絞りを絞るとくっきりと視野が欠けることになります。眼で言えば、緑内障のような感じです。

写真の端が暗くなる原因はなにか?

絞りの位置と像の関係がわかったところで、本題に入ります。なぜ周辺光量比が低下するのか。周辺光量比が低下する原因は大きく分けると原因は2つあります。

ひとつは機械的な要因。もうひとつは光学的要因です。

このふたつをそれぞれ説明していきますが、その前にまず前提知識を確認しましょう。

前提知識

はじめに知っておく知識は、「レンズとは、光の角度情報を位置情報に変換するもの」ということです。どういうことか。

レンズには様々な角度から光が入っていきます。レンズにまっすぐ入る光もあれば、斜めから入る光もあります。

まっすぐにレンズに入ってきた光は写真の真ん中に像をつくります。一方で斜めからレンズに入ってきた光は写真の端っこに像を作ります。レンズに入射した光の角度で像の位置が決まるのです。

これを数学的に言うと

y=f×tanθ

と表されます。この数式を日本語に翻訳すると、

「焦点距離fのレンズが、光の入射角度θを、像の位置yに変換している」

となります。

なのでレンズとは、光の角度情報を位置情報に変換するものと言えるのです。

周辺光量比

前提知識を確認したので、周辺光量比の話を進めます。

レンズとは、光の角度情報を位置情報に変換するもの、でした。これは写真の真ん中は光がレンズにまっすぐに入ったものであり、写真の端は光がレンズに斜めから入ったものと、いう意味になります。周辺光量比が落ちるということは、レンズに斜めから入射する光が暗くなる、ということです。

ではなぜ、斜めから入射する光は暗くなるのか。

繰り返しになりますが、その要因は、機械的要因と、光学的要因の2つです。

機械的要因

まずは機械的要因の説明です。ここを読むと、なんで絞りを絞ると明るさの分布が均一になるのかわかると思います。

機械的要因が発生するのは、低コストで小さいレンズにしたいためです。低コストで小さいレンズにするために、わざとレンズに斜めから入射する光の一部を遮っています。つまり、設計上の理由によるものです。

以下、レンズの光線図を示します。こちらの図には、レンズにまっすぐ入る光と、レンズに斜めから入る光の2種類が描かれています。

レンズにまっすぐ入る光を見ると、レンズの真ん中を通ってセンサー上に像をつくっているのがわかります。一方でレンズに斜めに入る光を見ると、レンズの端2箇所で光が遮られているのがわかります。こうやって遮られていることで、周辺光量比が低下します。

「だったら、レンズを大きくすればいいんじゃない?」

と思うかもしれません。たしかにその通りなのですが、いま遮っている光をレンズに取り込もうとすると、以下の2つの問題が生じてしまいます。

・物理的にレンズを大きくする必要がある。
・現在遮っている光はきれいに結像させるのが難しく、この光をきれいに結像させるためには、レンズ枚数を増やしたり、非球面レンズを追加する必要があります。

なので、レンズ設計のテクニックとして斜めの光の光量を落とすことで、コストを抑えたレンズをつくっているのです。

この機械的要因による、周辺光量費の低下を防ぐには、真ん中の光の幅を、斜めの光の幅と同じくらいに狭くしてやればいいわけです。写真全体の光量は減りますが、周辺光量比は改善されるのです。レンズの絞りを絞ると周辺光量比が改善されるのは、機械的要因による周辺光量比の低下が防げるためなのです

光学的要因

続いて光学的要因についてです。

光学的なものはコサイン4乗則と言われるものです。

コサイン4乗則とは、レンズに入射する光の角度をθとした場合、周辺光量比はcosθ^4で低下するというものです。

ここではあまり詳しく説明しませんが、簡単に計算すると、45度で入射した光がセンサーに入ると、真ん中に比べて光量は◯%となるということです。けっこう暗くなりますよね。

コサイン4乗はどこかから来ているかと言うと、以下の図になります。

①物体からの光の角度(cosθ)
②レンズと物体の距離(cosθ^2)
③レンズの瞳を斜めから見たときの面積(cosθ)

これがコサイン4条則です。

つまり原理的に周辺光量比は低下するということです。この光学的要因を改善するには、レンズ設計において以下の2つがあります。

・瞳収差を利用して斜めから見たときのレンズ瞳を大きくする。
・像歪(ディストーション)で、周辺の像を圧縮する。

この2つはレンズ設計する人以外は知らなくても大丈夫です。ちなみに、光学的要因はレンズの絞りには関係ないので、光学的要因による周辺光量比の低下は絞りを絞っても改善されません。

じゃあ、光学的要因の周辺光量落ちは、カメラ使う人は対策できないの?

光学的要因の周辺光量落ちも対策できます。

その方法はデジタル(画像処理)で補正するものです。お使いのカメラのメニュー画面に「周辺光量補正」のオンオフがあるかと思います。興味があったら、オンオフを切り替えて撮影してみてくださいね。

周辺光量比について、まとめると以下のようになります。

まとめ

まとめです。

周辺光量比のまとめ

・写真は端のほうが暗くなっている。これを周辺光量比という。
・周辺光量比が低下する要因は、光学的要因と機械的要因の2つがある。
・機械的要因で低下する周辺光量比は、レンズの絞りを絞ると改善する
(絞ると全体の光量は落ちるのでシャッタースピードを遅くなる、背景のぼやけも小さくなる)
・デジカメでは画像処理で周辺光量比が補正される。

以上です。原理を知ることで写真を撮るのが少しでもたのしくなればうれしいです。