無限系の光学パワー配置を計算するWEBアプリを作りました。つかってもらえるとうれしいです。
誰のためのもの?
これは光学系の概略を計算するものです。光学系が原理的に成り立つのかを素早く計算するものです。以下の方たち向けにつくりました。
光学設計者。光学設計初学者。
メカ設計者、回路設計者など、光学系以外のエンジニア。
光学に興味を持っている方。
想定利用シーン
計算できるのはあくまで概略であり、詳細なレンズ形状までは計算しません。そのため想定する利用シーンは以下の場面です
照明系の概要設計に。
原理的な可能かを検討に。
光学系で遊びたいときに。
使い方
使い方は非常にシンプルです。下記の4ステップです。
①光学系主要素の設定
②描画用の値を設定
③レンズデータの設定
④各値を調整
ではそれぞれを説明します。
①光学系主要素の設定
所望する光学主要素(Focal Length,Back Focal Length,Front Focal Length)の値を設定し、指定したい要素の「指定」をチェックする。特に無ければそのままでOKです。図の例では、(Back Focal Length,Front Focal Length)のみにチェックを入れてます。
描画用の値を設定
像高、絞り位置、絞り半径などの値を入力します。特に指定が無ければそのままでOKです。図の例でもなにも変えていません。
レンズデータの設定
レンズ枚数を設定し、既存レンズがあればその焦点距離や距離を入力します。その後、光学系主要素で「指定」した数と同数のレンズの「可変」をチェックします。図の例では、レンズ枚数を「5」枚、レンズ3の焦点距離を「100」、レンズ5の焦点距離を「300」にして、レンズ2とレンズ4の「可変」にチェックを入れています。
各値を調整
あとは、各値を変えてみてください。
- 主要素の値
- レンズ間距離
- 可変指定していないレンズの焦点距離
- 絞りの位置や絞り半径
- 像高
調整する際、「グラフの表示範囲を固定する」にチェックをいれると、値を変えたときの光学系の動きがわかりやすくなります。
計算した結果は、光線図の下に表示されます。指定した光学手要素の値を満たしていることがわかります。またこのときのレンズデータは右側に表示されます。「指定」としたレンズ2とレンズ4の焦点距離が自動で計算されています。
利用例
例1 液晶プロジェクターの照明系設計
液晶プロジェクターにおいて、フライアイレンズ・PBSを通過後から液晶パネルまでの光学系を設計します。プロジェクターの照明系は以下のようになっています。
G(Green)光を見ると、フライアイレンズのすぐ後に一つのレンズがあり、液晶パネルの直前にも一つのレンズがあります。合計で2つのレンズが配置されています。
なぜ2つのレンズなのか、なぜ1つや3つではないのか。それは光学系のパワー配置を計算すると理解できます。
液晶プロジェクターの照明系において重要なのは以下の2つです。
・フライアイレンズからパネルまでの距離が決まっていること
・テレセントリック系であること(詳細の説明は割愛)
これを光学系に置き換えると
・バックフォーカスは10mm程度
・フロントフォークがゼロであること
(系全体の焦点距離は不問)
と言えます。つまり、光学系の主要素の2つを満たす必要があり、そのためにレンズが2つ必要なのです。
この光学主要素を満たすように計算されたのが以下になります。光学系の焦点距離は105.5mmとなりました。
ちなみにB光路はG光路と同じです。
一方でR光路は光路長がG光やB光よりも長くなっています(下図)。そのため、R光は別の設計をする必要があります。
R光路の条件は以下の通り
・パネルに結像される倍率をG光やR光と同じにする必要がある
・パネルまでの距離が決まっている
・テレセントリック系であること
これを光学系に置き換えると
・焦点距離は-105.5mm(マイナスは反転させるため)
・バックフォーカスは10mm程度
・フロントフォークがゼロであること
となります。このアプリでやることは以下の3つ。
①この条件を光学系主要素に代入し、「指定」を3つ全てにチェックする。
②レンズ2枚追加し、レンズ3からレンズ5を「可変」にする。
③距離2、距離3、距離4を調整する。
すると以下のような光学系になります。
「可変」に指定したレンズ3つとも、焦点距離が小さくてパワーの大きなレンズになってますね。
これは光学系の図を見ても、R光路のレンズはぷっくり太っていて、焦点距離の小さいレンズだということがわかります。
こうして計算してみると、なぜG光路とB光路のレンズは2つで、R光路のレンズが4つなのかわかりますね。
ぜひつかってみてください。