「27日。埼玉まで、一緒にお弁当食べに行かない?」
先々週、僕が所属しているオンラインサロン「つながりサロン」の主催者である、楜澤静枝さんからメッセンジャーが送られてきた。
「埼玉? お弁当? 片道何時間かかる? 1日潰れるな。ていうか、往復の交通費がすごいことになりそう」
そんな考えが頭をよぎったけど、次の瞬間には、
「よくわからないけど、行きます!」
と答えていた。
松本から埼玉までお弁当を食べに行く。経済面や時間効率を考えると非合理である。しかし、今回気づけたのは、一見非合理に見えるものの中にこそ、自分が気づけていない合理性があるということだ。ということで、今回の気づきは「非合理の中にある合理性」である。
コアラ亭というお弁当屋さん
向かったのはホテルグリーンコアが運営する「コアラ亭」というお弁当屋さんだ。ホテルの経営者と楜澤さんは元々知り合いで、今年からお弁当屋さんを始めたこともあり、そのお弁当を食べるイベントを、楜澤さんが企画したということだ。集まったのは、経営者の方々など10名弱だ。
その日は偶然にも、お弁当を開発した横田美宝子さんもホテルに来ており、お弁当開発のストーリーを聞けた。驚いたのは、1案件のお弁当開発にも3ヶ月の時間を要するのだということ。ホテルのこだわりを反映させながら、衛生面にも配慮する。美味しさや彩り、ホテルで調理したときの再現性。その試行錯誤の連続だそうだ。お弁当開発にもストーリーがあるのだ。
横田さんとの会話は、自分がやりたいビジネスにもヒントをもらえた。お弁当のメニュー開発をホテルに提供し、その後のフォローアップをするということ。ここにヒントが有ると思った。食事のメニュー開発を、飲食店に提供するのではなく、異業種に提供する。異業種にこそサービス展開の可能性があるというヒントだ。
これまで、僕はものづくりに特化した商品開発サービスを提供するためのお客さんに、ものづくりの中小企業を考えていた。しかし、このお客さん像にずっと違和感を持っていた。ものづくりと言っても、車から、洋服、家電まで、様々である。その中で僕の提供するサービスがどんな企業にマッチするのか、イメージできずにいた。
お客さんは、ものづくり企業ではなく、むしろIT系などのソフトウェアの会社かもしれない。ソフトウェアの会社が、新たにハードウェアも含めた新商品を開発したいとき、ものづくりのスキルやノウハウが必要となる。ハードウェアのものづくりを知らない企業にこそ大きな価値を提供できるかもしれない。
非合理性と合理性
合理性とはなにか。合理性と言われる場面では大抵、経済面や時間効率について語られることが多いだろう。それも、これまでの自分の経験の範囲から考えた合理性だ。つまり、人が「合理的」と言うとき、自らの限られた経験の内側でしか物事を考えられていないのだ。
もちろん今までの経験から考えるのは大事だ。しかし、それでは自分の枠を超える新しい合理性には気がつけない。普段の自分がしない選択をするからこそ、普段は聞けない話が聞け、普段は接することのできない価値観に触れられる。経験の外側に出るから、思わぬ角度からヒントがもらえる。だからあえて、自分の合理性の外側を経験する意味があるのだ。
今回、埼玉までお弁当を食べに行くという、非合理な選択ができたのは、信頼する人からの誘いだったことは大きい。「よくわからないけど、きっと何かあるのだろう」そう思えたから行けたのだ。そして、非合理を選択した先に、大きなヒントがもらえた。この経験から、「時間とお金をかけて、先輩経営者に会いに行く」ことが僕の中で合理的になった。
非合理性を選択してみる
これまでは、漠然と月に1回くらい、今までの自分にない選択をしようと思い行動してきた。新しい経験、新しい注文、気の乗らない誘い。これらを月に1度くらいは経験できればいいくらいのつもりでいた。
しかし、これからは、確実に月に1回は、非合理な選択をしてみようと思う。それが、自分の中で新しい合理性になるし、その結果として、自分を広げることになると思うからだ。