半分冗談のつもりだった。
いや、半分どころか全部冗談のつもりだった。息子とスキーに行ったときのこと、冗談で「ひとりでリフトに乗ってみる?」と聞いてみた。息子は小学校3年生。スキーでは初心者コースは難なく滑れるレベル。もう、ひとりでリフトに乗っても問題ないだろう。
「でも」と思う。
「でも、きっと嫌がるだろうなあ。ひとりでリフトに乗ったが最後、降りるまでひとりでいなきゃいけないし。ステップアップのステップとしては少し段差の大きいものだし」
聞いた直後からぼくの頭の中では、息子の答えを予想した会話のシミュレーションがすでにはじまっている。
「いやだ!」「もう乗れるんじゃない?」「いやだ、父ちゃんと乗る」「しょうがないなあ」
ところが、息子から返ってきた言葉は、そんなシミュレーションとは真逆のものだった。
「ああ、それもいいね」
なんとあっさり。なんとあっけなく。
「ほんとに? 大丈夫?」
こちらから聞き返したくらいだ。
「うん、たぶん大丈夫」
ひとつ前のリフトに乗る息子の、いっちょ前になったうしろ姿。嬉しいのか心もとないのか、うしろを振り向く姿。なんの問題もなく降りていく姿。
リフトひとつぶんの距離感が、息子の成長と親離れを感じさせ、嬉しさと寂しさが混ざった感情を抱えたまま、持っていたカメラのシャッターを押した。
相手を信じる力
自己啓発書やビジネス本にはよく、「何かを継続したり、やり遂げたりするためにはスモールステップ化しよう」と書かれている。ぼくもスモールステップ化は大事だと思うし、それは意識的に実践している。一方で、人生にはスモールステップにできないこともある。リフトをひとりで乗るときのように、「やるか、やらないか」の2択を迫られる場面はいくらでもある。はじめてやることであれば怖さもあるし、自分にできるだろうかと不安にもなる。
こんなとき、もちろん自分の「できる」という感覚も大切にしてよいけれど、もうひとつ大事にしてもよいのは、周囲の「できる」という言葉を信じてみることだろう。
まわりから見たら、あるいは人生の先輩から見たら、「あなたなら、もう十分にできる」と思うようなことの中にも、当の本人からすると「まだまだ自分にはできない」と思っていることも多くあるはずだ。
こういうとき、自分には無理だと思ってしまいがちだけれど、たぶんその判断は正しくない。自分にとっての挑戦や冒険と言えるような行動をとりたいと思うとき、必要なのは、きっと勇気や自信よりも、「相手の言葉を信じる力」なのだ。
子どもから学ぶ
それにしても、子どもから学ぶことはほんとうに多いですね。ぼく自身ももっと周囲の人の言葉を信じてみてもいいのだろうな。周囲の言葉を「ああ、それもいいね」とあっさり受け入れてみる。「大丈夫?」と訊かれたら、「たぶん大丈夫」と言い返してみる。そうすると、いい方向に進めるような気がするんですよね。
そう思えるのは、あのときの息子の姿が、かっこよく見えたからなんだろうな。
個人事業主のためのクラブ活動をはじめます
ひとりビジネスの方のためのクラブ活動をはじめます。なにかと大変なひとりビジネスの方のペースメーカーとしてお役に立てればと思っています。
詳細やお申し込みは以下のリンク(画像)から。初月無料です!