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【今週の気づき/124】好きの深掘り

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ぼくは雪が好きである。

天気予報で自分の住む地域に雪マークがついているとその日を心待ちにするし、他の地域で豪雪のニュースが流れるとうらやましいとさえ思ってしまう。そのくらい雪が好きだ。

これを長野県で言うと白い目で見られる。雪だからというわけではないだろうけど、本当に白い目で見られる。なぜ他の人とこんなにも感覚が違うのか不思議になるけれど、人の好きなものは思ったより違うものなのだろう。

じゃあなぜ自分は雪が好きなのか、その理由を考えたとき、思い当たるのは子供のころに家族で行っていたスキー旅行だ。

スキー旅行

わが家では毎年越後湯沢にスキー旅行に行っていた。ぼくはその旅行を毎年楽しみにしていた。スキー旅行での思い出はたくさんある。リフトから落ちたこととか、わざと転んで子供用のプラスチックスキーを壊したこととか、滑っていた他の人と衝突したとか。でも、そんなスキー旅行のなかでも一番思い出に残っているのは、宿でのことだ。

父親が大学付属の中高教師をしていたこともあり、わが家は大学の合宿で使われる宿舎を利用できた。いかにも大学の合宿所という感じの建物で、長い廊下の両脇に部屋が並んでいて、部屋のなかは2段ベッドが2つだったか4つだったか並べられている質素なつくりだ。スリッパはよくあるペラペラのもの。食堂もあり、時間になるとピンポンパンポンというお決まりの音のあと「食事の用意ができました」と放送が流れる。ぼくはここで過ごす時間が好きだった。

ぼくがこの合宿所で感じていたのは自由だ。入口付近のロビーにはソファーとローテーブルがあり、そのテーブルの下に将棋や囲碁が置いてある。自分の好きなときにそのロビーに行き、ひとりで将棋や囲碁を並べて遊ぶ。飽きたら部屋に戻るなり、廊下を走るなりする。とにかく楽しかった。

スキーももちろん好きだったけれど、スキー旅行で一番思い出に残り、ワクワクしていたのは合宿所で感じていた自由だ。その思い出と雪とが結びつき、ぼくは雪が降るとその自由さを思い出すのだろう。

好きの深掘り

会社を辞め、個人事業主になってから強く感じるのは、自分の「好き」という感覚を軸にすることの重要性だ。誰かが仕事を与えてくれるわけではない環境で、自分から仕事をつくり、売っていかなければならない。そのような環境の中で自分の仕事をつくるには「好き」という感情は必須になる。自分の好きを頼りにやることを決めていく必要がある。

でも、この「好き」がなかなか厄介で、雪が好きだからといって雪をそのまま仕事に結びつけることは難しい。仕事化するためには、なぜ雪が好きなのかを深掘りして、根っこにある理由を知る必要がある。けれど、なぜ好きなのかといきなり聞かれても、簡単には答えにたどり着けないのが実際だろう。

好きな理由を考えたとき、唯一のヒントになるのは過去だ。好きなものに関わる思い出を振り返ることで、時間が経った今だからこそ見える好きの理由へとたどり着ける。

ぼくが雪を好きな理由は、「新しい自由」とつながっていたからだ。

合宿所での自由度は家の中での自由度とあまり変わりはない。それでもあんなにも自由だと感じたのは、家ではない新しい場所で得られた自由があったからだろう。家ではない場所での自由。知っている街ではない場所での自由。新しい場所で獲得した自由に、自分が拡張されたようなワクワクを感じたのだろう。

だからこそ今のぼくは、いろんなコミュニティに顔を出したり、新しい場所に行ってみたりするのにそれほど抵抗なく動けるのだと思う。

息子とのスキー

年末、少し早めに仕事納めをして、息子とスキーに行った。親というのは勝手なもので、自分がいいと思ったものを子どもに押し付けてしまいがちだ。自分がスキー旅行で感じた自由を味わってほしくて、スキー場とつながった宿に泊まっている。好きなときにスキーをして、好きなときに休める。スキーするのも部屋でダラっとするのも、自分で決められるってすごくいいと思って。

今のところ息子はスキーを好きでいてくれている。もちろん、スキー自体も好きなんだろうけど、旅館だったり、そこでの出来事だったり、スキー旅行全体として好きなんだと思う。

息子がなぜスキー旅行を好きでいてくれるのかはわからないけれど、将来好きの深掘りが必要になったとき、この旅行がヒントになればと勝手に思っている。


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